東京地方裁判所 昭和46年(ワ)6924号・昭46年(ワ)8955号 判決
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〔判決理由〕本件(1)の土地が原告の所有に属し、同地上に被告が本件建物を所有していることは当事者間に争いがない。
ところが、原被告らの亡父渡辺盛が昭昭和一二年に本件建物を建築所有していたところ、被告が昭和二一年一二月頃盛より贈与を受けてその所有権を取得したことは当事者間に争がなく、他方、盛が昭和二七年一一月大蔵省より本件(1)の土地の売払を受け(昭和二八年七月二日その旨の所有権移転登記を経由)、昭和三四年六月三〇日これを被告に贈与した(同年七月八日その旨の所有権移転登記を経由)ことは――証拠―に徴し明らかであり、被告が本件(1)の土地につき昭和三八年三月一六日斎藤義信のため抵当権を設定し(同月一八日その登記を経由)、次いで同月二二日株式会社岩渕商事のため抵当権を設定し(同月二三日その登記を経由)、更に同年四月二四日清水邦治のため抵当権を設定した(同月二六日その登記を経由)こと、その後清水から右抵当権の実行の申立がなされ、その結果、昭和三九年一〇月一日斉藤義信がこれを競落し(同年一一月一三日その旨の所有権移転登記経由)、更に同年一二月一六日原告が斎藤より本件(1)の土地を買受けた(同月一七日その旨の所有権移転登記経由)ことは当事者間に争いのないところである。
したがつて、被告が本件(1)の土地につき右の各抵当権を設定した当時本件建物も被告の所有であつたわけであるから、右の競落により、被告は民法三八八条に基づき本件(1)の土地につき地上権を取得したものということができる。
そこで、原告主張の本訴再抗弁および反訴抗弁について検討することとする。
被告が本件(1)の土地につき前記各抵当権を設定した当時本件建物につきその所有名義の登記を有していなかつたことは当事者間に争いがない。しかしながら、本件のように土地のみにつき抵当権の設定を受けた者はその地上に建物の存在することを了知しているのが通例であるから、競売の場合に地上の建物を所有する何人かがその土地につき地上権を取得するであろうことは当然予期すべきところであり、このことは右の土地の競落人についても同様である。したがつて、抵当権設定当時本件建物につき被告所有名義の登記がなかつたからといつて、被告が本件(1)の土地につき法定地上権を取得することの妨げとはならない。
次に、被告が前記法定地上権につき登記をしていないことについても当事者間に争がない。しかしながら、<証拠>を総合すると、盛は本件建物を建築するに当り便宜上原告の名義を使用した関係からその家屋台帳、建物登記簿表題部等はすべて原告の所有名義で登録または登記されていたこと、そこで、被告は昭和二六、七年頃から何度か本件建物につきその所有名義に登記をするため原告に協力方を求めたこと、しかるに、原告は被告が昭和三二年結婚した際亡父盛より本件建物の贈与を受けたことを知悉しながら、色々と口実を設けて不当に被告の要求を拒絶していたこと、昭和三四年に入り被告から右の要求を受けるや原告は遂に本件建物が被告の所有であることを否定し、自らの所有であると主張するに至つたこと、そのため被告は、昭和四二年原告に対し、本件建物が被告の所有であることの確認を求めるとともに、本件建物につき所有権移転登記手続を求める訴を提起し、これが勝訴の確定判決を得て、漸く昭和四六年四月一四日本件建物につき真正な登記名義の回復を原因として被告のため所有権移転登記手続を了した(なお、これより前昭和四三年六月一一日原告は本件建物につきその所有名義に保存登記を経由している)ことが認められるのであつて、右認定の事実によると、原告が前記被告の要求に応じて本件建物につき被告の所有名義に登記をすることに協力をしているならば、被告は前記本件(1)の土地の法定地上権につき建物保護ニ関スル法律第一条による対抗要件を具備することができた筈のものであつて、結局、原告の前記不当な協力の拒否のため被告は右の対抗要件の具備を妨げられていたものといわざるをえない。したがつて、原告は、右被告所有名義の登記の欠缺につき自らその原因を与えているものとの非難を免れないから、不動産登記法第四条の精神ないし信義則上、本件建物の被告所有名義の欠缺ひいては右の対抗要件の欠缺を理由にして被告の前記本件(1)の土地の法定地上権を否定することは許されない。 (真船孝充)